
こんにちは。管理人のまむしです。
今回は、建設キャリアアップシステムの分析をしてみました。文章が長いのですが、結構内容は、わかりやすいと思います。
1. 建設キャリアアップシステム(CCUS)の概要
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、国土交通省が主導する、建設業における技能者の技能や経験に応じた適切な処遇を目指し、技能者の資格や現場での就業履歴などを登録・蓄積する仕組みである 。
このシステムは、技能者が自身の技能や経験を適切に評価され、それに応じて給与が向上するような建設業を目指しており、特に若い世代の技能者がキャリアパスや処遇の見通しを持てるようにすることを目的としている 。また、技能者を雇用し育成する企業が成長できるような環境を整備することも目指している 。
CCUSは、技能者の資格や就業履歴を一元的に管理し、能力評価につなげることで、建設業全体の魅力向上を図っている 。
このシステムが重要視される背景には、建設業における就業者の高齢化や若手人材の不足といった課題が存在する。CCUSの登録者の男女比率、世代、地域の分布を分析することは、現在の建設業界における労働力の状況を把握する上で不可欠である。このような分析を通じて、潜在的な不均衡や課題が明らかになり、より効果的な政策立案や人材育成戦略の策定に貢献することが期待される。
建設業界がより魅力的になり、若年層を含む多様な人材が参入しやすい環境を整備するためには、CCUSの登録データを詳細に分析し、現状を正確に理解することが重要となる。CCUSの導入当初から、若い世代のキャリアパスの明確化と処遇改善が重視されていた事実は、建設業界における年齢構成の偏りに対する問題意識が以前から存在していたことを示唆している。
また、技能や経験に応じた適切な処遇という目標は、過去の建設業界において、個人のスキルが十分に評価されず、処遇に反映されないという構造的な課題が存在していた可能性を示している。
2. CCUSの全体登録者数
建設キャリアアップシステムの累積登録者数は、技能者と事業者ともに着実に増加している。2024年8月末時点での技能者登録数は150万人を突破し 、2025年2月28日時点では1,610,190人に達した 。また、事業者登録数も同様に増加しており、2024年10月末時点で約28万者 、2025年2月28日時点では288,268者(更新を行わなかった事業者を除く)となっている 。
過去の登録者数の推移を見ると、2020年3月末時点での技能者登録数はおよそ22万人 、2021年1月末時点ではおよそ46万人 、2024年3月時点では約140万人 であったことが報告されている。これらの数値から、CCUSの普及が年々進んでいることがわかる。
登録者数の継続的な増加は、建設業界におけるCCUSの認知度と重要性が高まっていることを示唆している。これは、業界全体として技能者のキャリアアップや適正な評価に対する意識が高まっていることの表れと考えられる。
一方で、国土交通省が目指す建設技能者全体の登録という目標に対して、現在の登録者数がどの程度の割合を占めているかを考慮すると、さらなる普及促進の余地があることも示唆される。
推定される建設技能労働者数は約300万人とも言われており 、現在の登録率はまだ一定の伸びしろがあると考えられる 。
3. CCUS登録者の男女比率分析
提供された資料には、CCUS登録者の男女比率に関する具体的な統計データは見当たらなかった。しかし、建設業界全体の男女比率に関する情報から、ある程度の推測を試みることができる。2023年の全産業における女性就業者の割合は45.3%と過去最高を記録したが、建設業における女性の割合は18.2%と、他産業に比べて低い水準にあるものの、こちらも過去最高を更新している 。
CCUSは、男性だけでなく女性の就業継続にも活用できることが示唆されており 、女性の建設業界への参画を促進する意図がうかがえる。建設業が依然として男性中心の業界という認識が強く(いわゆる「3K」のイメージ )、それが女性の登録率に影響を与えている可能性も考えられる。
CCUS登録者の男女比率に関するデータが存在しないことは、この側面からの分析を困難にしている。今後、より詳細なデータが開示されることで、CCUSが建設業界におけるジェンダーバランスにどのような影響を与えているのか、あるいはどのような課題が残されているのかをより深く理解することが可能になるだろう。建設業界全体の女性比率が低い現状を踏まえると、CCUSにおいても同様の傾向が見られる可能性が高いが、CCUSの推進が女性の活躍を後押ししているかどうかを検証するためには、具体的なデータが不可欠である。
4. CCUS登録者の世代別分布分析
2021年に建設キャリアアップシステムに登録済みの技能者を対象に行われたアンケート調査によると、年代別の割合は20代以下が10%、30代が15%、40代が34%、50代が30%、60代が11%であった 。
一方、建設業界全体の就業者における年齢層別の分布を見ると、2022年の平均では55歳以上が35.9%、29歳以下が11.7%となっており 、高齢化が進行していることがわかる。別の調査では、現在建設技能者の約25%が65歳以上であるのに対し、30歳未満は約10%程度と報告されている 。
また、建設業における生産労働者の年齢別賃金は、製造業全体と比較してピークが5年ほど早く、45~49歳で迎える傾向にある 。これは、現場管理や後進の指導といったスキルが適切に評価されていない可能性を示唆している 。
CCUS登録者の2021年の年齢分布を見ると、20代以下と30代の合計が25%であるのに対し、業界全体の29歳以下の割合が11.7%(2022年)または30歳未満が10%(別の調査)であることから、CCUS登録者の方が比較的若い世代の割合が高い可能性がある。これは、CCUSがキャリアパスの明確化や公正な評価を重視していることが、若年層にとって魅力的に映っている可能性を示唆している。しかし、これは2021年のデータであり、最新のデータでこの傾向が維持されているかを確認する必要がある。建設業界全体として高齢化が進んでおり、今後10年で大量の離職が見込まれる中で 、若手人材の確保と育成は喫緊の課題となっている 。
建設業における賃金カーブのピークが製造業よりも早いという現状は、経験を積んだ技能者のスキルが十分に評価されていない可能性を示唆しており、これが若手人材の定着を妨げる要因の一つとなっているかもしれない。CCUSが技能者の経験やスキルを適切に評価し、処遇に反映させることで、このような課題の解決に貢献することが期待される。
5. CCUS登録者の地域別分布分析
2020年9月30日現在の建設キャリアアップシステム技能者・事業者登録数(都道府県別)のデータによると、技能者登録数が多い都道府県は、東京都(38,476人)、神奈川県(27,404人)、大阪府(26,725人)、埼玉県(26,126人)、愛知県(23,880人)、千葉県(22,239人)、北海道(19,291人)、福岡県(12,760人)、宮城県(12,674人)、兵庫県(10,860人)などであった 。一方、事業者登録数が多い都道府県も同様の傾向にあり、東京都(8,842者)、神奈川県(5,158者)、愛知県(5,612者)、大阪府(6,067者)、埼玉県(4,619者)、千葉県(3,553者)、北海道(2,690者)、福岡県(2,533者)、兵庫県(2,286者)、広島県(2,045者)などが上位に位置している 。
これらのデータから、大都市圏や主要な工業地帯を抱える都道府県で登録者数が多い傾向が見られる。これは、これらの地域における建設活動が活発であることや、CCUSに対する認知度が高いことなどが要因として考えられる。一方、技能者登録数が少ない都道府県としては、鳥取県(1,229人)、和歌山県(1,326人)、山梨県(1,785人)、滋賀県(1,977人)、奈良県(2,411人)などが挙げられる 。
地域ごとの登録者数の差は、建設業の活動規模や地域特性、CCUSの普及度合いなど、様々な要因によって生じると考えられる。都市部では大規模な建設プロジェクトが多く、CCUSの導入が進んでいる可能性が高い。一方、地方や中山間地域では、建設業の規模が小さい場合や、CCUSに関する情報が行き渡りにくい可能性も考えられる。
表1:都道府県別技能者・事業者登録数(2020年9月30日現在)
| No. | 都道府県 | 技能者ID数 | 事業者ID数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 | 19,291 | 2,690 |
| 2 | 青森県 | 6,723 | 638 |
| 3 | 岩手県 | 6,004 | 627 |
| 4 | 宮城県 | 12,674 | 1,796 |
| 5 | 秋田県 | 2,711 | 313 |
| 6 | 山形県 | 3,424 | 486 |
| 7 | 福島県 | 7,733 | 1,026 |
| 8 | 茨城県 | 6,286 | 1,139 |
| 9 | 栃木県 | 4,033 | 917 |
| 10 | 群馬県 | 3,419 | 762 |
| 11 | 埼玉県 | 26,126 | 4,619 |
| 12 | 千葉県 | 22,239 | 3,553 |
| 13 | 東京都 | 38,476 | 8,842 |
| 14 | 神奈川県 | 27,404 | 5,158 |
| 15 | 新潟県 | 7,102 | 828 |
| 16 | 富山県 | 3,115 | 555 |
| 17 | 石川県 | 3,669 | 732 |
| 18 | 福井県 | 2,830 | 484 |
| 19 | 山梨県 | 1,785 | 379 |
| 20 | 長野県 | 4,486 | 764 |
| 21 | 岐阜県 | 6,121 | 1,332 |
| 22 | 静岡県 | 7,746 | 1,564 |
| 23 | 愛知県 | 23,880 | 5,612 |
| 24 | 三重県 | 4,184 | 965 |
| 25 | 滋賀県 | 1,977 | 421 |
| 26 | 京都府 | 5,005 | 1,218 |
| 27 | 大阪府 | 26,725 | 6,067 |
| 28 | 兵庫県 | 10,860 | 2,286 |
| 29 | 奈良県 | 2,411 | 418 |
| 30 | 和歌山県 | 1,326 | 237 |
| 31 | 鳥取県 | 1,229 | 214 |
| 32 | 島根県 | 2,798 | 349 |
| 33 | 岡山県 | 4,264 | 875 |
| 34 | 広島県 | 8,916 | 2,045 |
| 35 | 山口県 | 3,340 | 780 |
| 36 | 徳島県 | 2,502 | 411 |
| 37 | 香川県 | 4,381 | 704 |
| 38 | 愛媛県 | 4,300 | 788 |
| 39 | 高知県 | 2,565 | 388 |
| 40 | 福岡県 | 12,760 | 2,533 |
| 41 | 佐賀県 | 2,112 | 345 |
| 42 | 長崎県 | 2,682 | 383 |
| 43 | 熊本県 | 4,096 | 582 |
| 44 | 大分県 | 2,328 | 380 |
| 45 | 宮崎県 | 2,620 | 353 |
| 46 | 鹿児島県 | 3,417 | 608 |
| 47 | 沖縄県 | 2,578 | 400 |
| 合計 | 366,653 | 68,566 |
この2020年9月時点のデータは、地域ごとのCCUS登録状況の初期段階を示すものと考えられる。その後の普及活動や建設業界の動向によって、地域別の登録者数に変化が生じている可能性もあるため、より新しいデータの分析が望まれる。
主要都市圏での登録が多いことは、これらの地域での建設プロジェクトの多さと、システム導入の必要性が高く認識されていることの現れであろう。一方、地方圏での登録促進には、地域の実情に合わせた普及活動やインセンティブの提供などが有効と考えられる。
6. 人口統計分析の主要な洞察と示唆
今回の分析を通じて、建設キャリアアップシステムの登録者数全体は着実に増加しており、システムが建設業界に浸透しつつあることが示された。しかし、男女比率に関する具体的なデータは不足しており、今後の情報公開が待たれる。年齢分布に関しては、2021年の調査データから、CCUS登録者の方が業界全体と比較して比較的若い世代の割合が高い可能性が示唆された。これは、CCUSの掲げるキャリアパスの明確化や公正な評価が、若年層に一定の魅力を与えている可能性を示唆している。地域別の分布を見ると、大都市圏での登録が多く、地方圏では伸びしろがあることが示された。
これらの人口統計学的特徴は、建設業界における今後の workforce planning、採用戦略、政策立案に重要な示唆を与える。高齢化が進む建設業界において、若年層のCCUS登録者の割合が高い可能性は、将来の労働力確保に向けた明るい兆しと捉えられる。しかし、この傾向を維持し、さらに拡大するためには、若年層が建設業に魅力を感じ続けられるような環境整備が不可欠である。
また、男女比率の現状を把握し、女性がより働きやすい環境を整備することで、多様な人材の活躍を促進する必要がある。地域別の登録状況の偏りは、CCUSのメリットが十分に伝わっていない地域や、建設業の特性が異なる地域に対する、よりきめ細やかな普及活動の必要性を示唆している。さらに、建設業における賃金カーブの早期ピークという課題に対して、CCUSが技能者の経験やスキルを継続的に評価し、処遇に反映させる仕組みを強化することで、より長期的なキャリア形成を支援できる可能性がある。
7. 提言
分析結果に基づき、建設キャリアアップシステムの更なる発展と、建設業界全体の課題解決に貢献するための提言を行う。
まず、CCUS登録者の男女比率や、より詳細な年齢層別のデータ(例えば、5歳刻みなど)を定期的に収集し、公開することを推奨する。これにより、より精緻な分析が可能となり、ジェンダーバランスや世代間の偏りといった課題に対する具体的な対策を検討するための基礎データとなる。
次に、女性や若年層に対して、CCUSのメリットをより積極的に周知するキャンペーンを展開することを提案する。キャリアパスの明確さ、スキルに応じた公正な評価、賃金アップの可能性などを具体的に示すことで、建設業に対するイメージを向上させ、参入を促進することが期待される。
地域別の登録状況の偏りを解消するため、登録者数が少ない地域に対して、地方建設業協会や自治体と連携した普及活動を強化することを提言する。地域の実情に合わせた説明会や相談窓口の設置、登録手続きのサポートなどを提供することで、より多くの事業者や技能者の参加を促すことができる。
さらに、建設業における技能者のスキル評価と処遇に関する制度を見直し、経験年数だけでなく、現場での実績や指導能力なども適切に評価する仕組みを検討することを提案する。これにより、賃金カーブの早期ピークという課題に対応し、ベテラン技能者のモチベーション維持と若手技能者の長期的なキャリア形成を支援することが可能になる。
最後に、CCUSで蓄積されたデータを活用し、技能者のスキルアップやキャリア形成を支援する研修プログラムや資格取得支援制度を充実させることを提言する。これにより、技能者の能力向上を図るとともに、建設業界全体の技術力向上に貢献することが期待される。
8. 結論
建設キャリアアップシステムは、日本の建設業が抱える課題解決に向けた重要な取り組みである。登録者の男女比率、世代、地域の分析を通じて、システムの現状と今後の課題が見えてきた。
今後、より詳細なデータの収集と分析を進め、提言された対策を実行することで、建設業界はより持続可能で魅力的な産業へと発展していくことが期待される。CCUSが、技能者一人ひとりのキャリアアップを支援し、建設業界全体の活性化に貢献していくためには、継続的なデータ分析とそれに基づいた改善策の実施が不可欠である。

以上、日本国内における建設キャリアアップシステムについて、分析しました。
お役に立てれば幸いです。

